オタクのためらい

え?
『すべてがFになる』がドラマ化?
あれ…犀川先生、ちょっと若過ぎない?

と昼休みのおやつを食べながら同僚と話していた。
(今日のおやつは同僚が作ってきてくれたパンナコッタである)
(贅沢な手作りおやつ…美味しかった)

同僚はノベルスの装丁の美しさに惹かれて
『すべてがFになる』を読んだのだそうだ。
「あの装丁すっごくかっこよかったよね!」
と、ふたりしてしばし思い出にひたった。
(わたしは森先生の短編集がたいそう好きです)

同僚と小説の話をするたびに
「この人『活字倶楽部』は読んでなかったのかな…」
と思っているのだがなんとなく訊けていない。

同様にまんがの話をするたびに
「この人、同人誌も知ってるんじゃないのかな…」
と思っているのだがどうしても訊けない。


先日、美容院で担当の美容師さん(男性・年下)が
「今、あだち充にハマってるんですよー」と話をふってきたので
「ああ、わたしも好きですよ…一番好きなのは『ラフ』です」
とにこやかに答えたら、『ラフ』のことはご存知なかったようだった。
あだち充氏は野球まんがだけじゃないんだぜ…)
気まずい思いをさせてしまって反省している。


他人様がおのれが「好き」だと感じている対象物に対して、
同様に「好き」という感情を抱いていることがわかっても、
お互いが似たような方向性・目線でそれをとらえており、
それについて同等の知識を持ちあわせ、
さらに、似たようなテンションでそれについて話し合えなければ、
お互いに気まずい思いをするということをわたしは知っている。
(なぜなら何度も何度も経験しているからだ!)

しかし、そんな幸せな瞬間はほとんどめぐってこない。
だいたいがぺらぺらと対象物について語って
「あ、すいません、マニアックな話をしてしまって」と謝るか、
「あ、すいません、勉強不足で」と謝るかのどちらかである。
(どっちにしても謝ることになる)

それでもいつか、同僚ともっと深いオタク話ができたらいいなあと思っている。